厚労省、美容医療の違法事例への対応強化通知を発出─カウンセラーによる「診断」を医師法違反と整理
発信元:厚生労働省
厚生労働省は2025年8月、美容医療の違法・不適切事例への対応を強化するため、都道府県知事や保健所設置市長に向けた通知を発出した。2024年11月にとりまとめられた「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書を踏まえ、カウンセラーによる治療内容の決定が医師法違反となり得ることなどを明確化。立入検査や是正命令の運用も整理された。
厚生労働省は2025年8月、自由診療として行われる美容医療の違法・不適切事例への対応を強化するため、都道府県知事・保健所設置市長・特別区長に宛てた通知「美容医療に関する取扱いについて」を発出した。2024年11月22日にとりまとめられた「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書を踏まえ、これまで判断が曖昧だった違法ラインや行政対応の手順を整理した内容となっている。
通知の背景
美容医療をめぐっては、2024年に厚労省「美容医療の適切な実施に関する検討会」が設置され、相談件数の増加や死亡事例の発生を背景に、違法・不適切な事例への対応策が議論されてきた。同検討会の報告書では、「安全」と「質」の2つの視点から7つの対応策が示され、医療機関の安全管理体制を制度として把握する仕組みなどが提言されていた。
今回の通知は、この報告書の内容を行政の現場で運用できるよう、法令解釈と是正措置のあり方を体系的に整理したものに位置づけられる。厚労省は、警察庁と消費者庁の協議も経て発出したと説明している。
通知で整理された主な論点
- カウンセラーによる治療提案の違法性:医師資格を持たない者が患者から希望を聞き取り、治療法を提案・決定する行為は、実質的に「診断」に該当し、カウンセリングの範疇を超えて医師法第17条違反になり得ると整理
- 立入検査の強化:医師法・医療法違反の疑いがある場合、保健所による積極的な立入検査の実施を求めた。虚偽報告・拒否・妨害があった場合、医療法第89条に基づく刑事罰の可能性も明示
- 是正命令と行政処分:違反確認時、都道府県知事は医療法第24条の2に基づき是正命令を発出可能。命令に従わない場合は業務停止、開設許可取消し、閉鎖命令といった処分が行えると明確化
- 整理された違反類型:診療録の作成・保存義務違反、管理者の長期不在、医療安全対策の不備、虚偽・誇大広告など、美容医療で多発する違反事例を類型化
- 関連機関との連携:消費生活センター等との連携も盛り込み、行政全体での監視・対応体制の構築を強調
「カウンセラーによる診断」が論点に
今回の通知の中で、特に美容医療の現場運用に直接影響するのが、いわゆる「カウンセラー」の業務範囲についての整理である。検討会報告書では、患者がカウンセラーのみと相談して決定した治療内容を、そのまま医師が実施している事例が指摘されていた。
通知では、無資格者が治療法を提案したり、施術の希望を聞き取って個別に対応するような行為は、実質的に「診断」に該当する可能性があるとされた。診断は医師法第17条で医師に独占的に認められた医行為であるため、医師以外の者が行えば医師法違反となる。これは美容クリニックの「カウンセラー制度」全般に再点検を迫る内容と言える。
医療機関側に求められる対応
通知は法令の新設ではなく、既存の医師法・医療法等の解釈整理という位置づけだが、行政の運用方針が明確化されたことで、これまで黙認されてきた業務フローが指導対象になる可能性がある。具体的には、以下のような点について医療機関側の見直しが想定される。
- カウンセラーの業務範囲(料金・予約・術後ケア説明など)と、医師のインフォームド・コンセントの境界の明確化
- 医師による診察・治療方針決定の記録(診療録)の整備
- 管理者となる医師の常勤体制の確認
- 医療安全対策・事故防止策の文書化
利用者側の留意点
美容医療を検討する利用者にとって、今回の通知は「クリニックを選ぶ際の判断材料」が増えたことを意味する。カウンセラーから治療内容の提案を受けた場合でも、最終的な診断・治療方針は医師が直接説明する義務があり、その場で疑問を残したまま契約・施術に進むことは推奨されない。個人輸入医薬品の使用や未承認医療機器の使用など、説明されるべき事項が説明されていない場合は、医師に直接確認する姿勢が重要となる。
なお、厚労省は2025年8月以降、患者向けの啓発サイト「その美容医療、ちょっと待って!」も公開しており、施術前に確認すべきポイントや公的相談窓口の情報をまとめている。
編集部の見解
今回の通知は、新たな規制を作るというより「既にあるルールの解釈を明示した」性格が強い。だからこそ、これまでグレーゾーンとして運用されてきた業務フロー──特にカウンセラー主導の契約プロセス──に対して、行政が踏み込む準備が整ったと読み取れる。整形ラボ編集部としては、利用者・医療機関の双方にとって透明性が高まる方向の動きとして、引き続き注視していきたい。
※本記事は厚生労働省の公開情報に基づき編集部がまとめたものです。具体的な法令解釈や個別の事案については、厚生労働省の通知原文および所管の都道府県・保健所にご確認ください。本記事は法的助言を提供するものではありません。
本記事の元情報は厚生労働省でご覧いただけます。
厚生労働省公式で確認する