ボトックス
(ボトックス)
Botox / Botulinum Toxin Type A
ボツリヌス菌から抽出されるタンパク質で、筋肉の動きを一時的に抑制する薬剤。表情ジワやエラ張り、わきがの治療に幅広く使われる、世界で最も施術件数の多い美容医療の一つ。
ボトックスとは
ボトックス(Botox)は、ボツリヌス菌から抽出される天然のタンパク質「ボツリヌストキシンA型」を有効成分とする薬剤です。元々は米Allergan社(現アッヴィ社)の製品名ですが、現在では類似製品も含めて「ボトックス治療」「ボツリヌス注射」と総称されることが多い薬剤です。
美容医療では、表情ジワの改善やエラ張りの解消、わきが治療など幅広く使われており、世界で最も施術件数の多い美容医療の一つです。1980年代から斜視・眼瞼痙攣などの治療に使われてきた長い歴史があり、安全性・効果ともに豊富なエビデンスがあります。
作用機序
ボツリヌストキシンは、神経筋接合部においてアセチルコリンの放出を阻害することで、筋肉の収縮を一時的に抑制します。これにより、表情ジワの原因となる筋肉の動きを弱めたり、肥大化した筋肉を萎縮させたりする効果が得られます。
注射してから効果が現れるまでは2〜3日後から徐々にで、効果のピークは2週間程度。3〜6ヶ月かけて徐々に効果が薄れていきます。
主な施術部位と用途
- 眉間のシワ:眉をひそめる癖でできる縦ジワを軽減
- 目尻のシワ(カラスの足跡):笑った時の目尻の小じわを改善
- 額の横ジワ:上を見上げる動きで現れるシワを抑制
- エラボトックス:咬筋(こうきん)の肥大を抑え、小顔・フェイスライン改善
- ガミースマイル:笑った時に歯茎が見えすぎる症状を軽減
- あご(梅干しジワ):あごのオトガイ筋の緊張を緩和
- わきが・多汗症:エクリン汗腺・アポクリン汗腺の活動を抑制
- ふくらはぎボトックス:腓腹筋の発達を抑え、脚を細く見せる
代表的な製剤
「ボトックス」は元々アラガン社の製品名ですが、同種の薬剤として以下のものがあります。
- ボトックスビスタ(アラガン社、米国):日本で唯一、美容目的の表情ジワに対して厚労省承認を得ている製剤
- ニューロノクス/ボツラックス(韓国Medytox社):価格が比較的安く、多くのクリニックで採用
- ゼオミン(Xeomin)(ドイツMerz社):複合タンパク質を含まない高純度製剤。耐性ができにくいとされる
- ディスポート(英国Ipsen社):効果発現がやや早いとされる
クリニックで「ボトックス」と説明されても、実際に使われる薬剤はクリニックによって異なるため、必ず使用製剤を確認しましょう。
単位(ユニット)について
ボトックスの量は「単位(ユニット/U)」で表され、施術部位によって適切な単位数が異なります。一般的な目安は以下のとおりです。
- 眉間:10〜25単位
- 目尻:左右合計10〜30単位
- 額:6〜20単位
- エラ:左右合計40〜60単位
- ふくらはぎ:左右合計100〜200単位
単位数が少なすぎると効果が不十分になり、多すぎると表情が不自然になったり、筋肉が落ちすぎて頬がこけたりする可能性があります。経験豊富な医師による適切な単位設計が重要です。
リスク・副作用・ダウンタイム
- 注射部位の腫れ・赤み・内出血:数日で治まる軽微なもの
- 表情の不自然さ:効果が強すぎたり、注入位置が不適切だと、表情が硬くなったり片側だけ動かなくなる場合があります
- 眼瞼下垂:眉間や額の施術で、薬剤が眼瞼挙筋に拡散すると、まぶたが下がる症状が稀に出現
- 頭痛・倦怠感・インフルエンザ様症状:稀に一時的に出現
- 抗体産生(耐性):何度も繰り返すと、まれに薬剤に対する抗体ができて効果が出にくくなる
ダウンタイムはほぼなく、当日から日常生活が可能です。ただし、施術当日は4時間程度は横にならない、施術部位を強くマッサージしない、激しい運動・飲酒・サウナを避けることが推奨されます。
費用相場
- 眉間・目尻・額(各部位):1万〜5万円程度
- エラボトックス:3万〜10万円程度
- ふくらはぎボトックス:6万〜15万円程度
- わきが・多汗症:5万〜15万円程度
使用する製剤によって価格が大きく変わります。アラガン社のボトックスビスタは比較的高価で、韓国製のジェネリック類似品は安価な傾向にあります。
施術を受ける際の注意点
- 妊娠中・授乳中の方は施術不可
- 過去にボツリヌス製剤に過敏症の既往がある方は施術不可
- 全身性の神経筋疾患(重症筋無力症など)がある方は要相談
- 妊娠を計画している場合は、施術後3ヶ月以上空けることが推奨されます
- 施術の前後1週間は、抗生物質(特にアミノグリコシド系)の服用を避ける
カウンセリング時には、希望する仕上がり(自然に動かせる程度の効果か、しっかり動きを止めたいか)を伝え、医師と相談のうえで単位数を決定しましょう。