下顎枝矢状分割
(カガクシシジョウブンカツ)
Sagittal Split Ramus Osteotomy (SSRO)
下顎枝矢状分割術(SSRO)は、下あごの骨を矢状方向に分割し、位置を前後へ移動させて咬み合わせと輪郭を整える顎矯正手術です。受け口や下顎の突出・後退の改善を目的とし、口腔内から行うため顔に傷が残りにくい術式として知られています。
下顎枝矢状分割とは
下顎枝矢状分割術(SSRO)とは、下あごの骨を矢状方向に分割し、歯のついた骨片を前後へ移動させて咬み合わせと輪郭を整える顎矯正手術です。受け口や下顎の突出・後退といった骨格的な要因が関係するお悩みに対して行われ、咬合機能と下顔面のバランスを同時に整えることを目的とします。切開は口の中から行うため、顔の表面に傷が残りにくいとされる点が特徴です。歯科矯正と組み合わせて計画されることが多い術式です。効果の程度には個人差があります。
期待される効果
- 受け口(下顎前突)や下顎後退といった骨格的なお悩みの改善が期待されます
- 上下の歯の咬み合わせが整い、咀嚼などの機能向上が見込まれます
- 下顔面の前後的なバランスが調整され、横顔の印象が変化することがあります
- フェイスラインやおとがい部の形態が整いやすくなります
- 歯科矯正と組み合わせることで、より総合的な改善が期待されます
施術の流れ
まずカウンセリングとレントゲン・CTなどの検査を行い、咬合や骨格の状態を確認したうえで移動量を計画します。多くの場合、術前に歯科矯正で歯並びを整える期間を設けます。手術は全身麻酔下で行われ、口腔内から下顎枝にアプローチし、骨を矢状方向に分割します。続いて歯のついた骨片を計画した位置へ移動させ、プレートやスクリューで固定します。手術後は入院のうえ経過を観察し、退院後も定期的な通院で咬合や骨の癒合の状態を確認していきます。治療全体は長期にわたることが一般的です。
施術後のケアと効果実感の目安
術後は腫れや内出血が生じやすく、口の開けづらさや食事の制限を伴うことが一般的です。回復のペースには個人差がありますが、おおよその目安は以下のとおりです。
- 術直後〜1週間:腫れや痛みが強く出やすい時期。流動食や軟らかい食事で様子をみます
- 2〜4週間:腫れが徐々に落ち着き、日常生活へ戻りやすくなります
- 1〜3か月:骨の癒合が進み、咬み合わせが安定してくる時期です
- 半年以降:知覚の回復や最終的な輪郭の印象が定まってくることがあります
術後は処方された内服薬や口腔内の清潔保持など、医師の指示に沿ったケアを続けることが大切です。骨が安定するまでは固い食品や強い咀嚼を避け、定期的な受診で経過を確認することをおすすめします。回復の早さや知覚の戻り方には個人差があります。
リスク・副作用
- 腫れや内出血が生じ、落ち着くまで時間を要することがあります
- 下唇やおとがい部の知覚鈍麻・しびれが生じる場合があります(回復に個人差があります)
- 術後の感染や出血のリスクがあります
- 咬み合わせのずれや、計画どおりの位置に固定できないことがあります
- 骨片の不適合や、固定材(プレート・スクリュー)に関連したトラブルが起こることがあります
- 全身麻酔に伴うリスクや、術後の開口障害が生じる場合があります
費用相場
自由診療の場合、下顎枝矢状分割術の費用相場は両側で約150万〜300万円が目安とされます。これに術前の歯科矯正費用や検査費、入院費などが加わることがあります。なお、顎変形症などの診断がつき所定の条件を満たす場合には、健康保険が適用されるケースもあります。費用は施設や治療範囲によって大きく異なります。
費用比較の留意点として、提示された金額に麻酔・入院・術後の通院・矯正治療がどこまで含まれているかは施設ごとに異なります。総額だけでなく内訳や保険適用の可否、追加費用の有無を事前に確認しておくとよいでしょう。価格の安さだけで判断せず、診療体制や説明の丁寧さも含めて比較検討することが望まれます。
向いている人・向いていない人
- 受け口や下顎の突出・後退など、骨格的な要因による咬合や輪郭のお悩みがある方に向いています
- 咬み合わせの機能改善と審美的な変化を併せて希望する方に向いています
- 長期の治療期間やダウンタイムを許容できる方に向いています
- 全身状態に大きな問題があり、全身麻酔下の手術が難しい方には向きにくいとされます
- 軽度のお悩みで、より負担の少ない方法を希望する方には適さない場合があります
下顎枝矢状分割術は身体への負担が比較的大きい手術であり、適応や移動量の判断には専門的な評価が欠かせません。仕上がりやリスクの感じ方には個人差があるため、自己判断で進めず、経験豊富な医師のカウンセリングを受けたうえで十分に相談し、納得して治療方針を決めることをおすすめします。